2019年5月16日付にて、平成30年度 天然ガスの高度利用に係る事業環境等調査事業として、「熱量バンド制への移行による燃焼機器の影響等調査」に関する報告書が経済産業省のウェブサイトに掲載された。本報告書は、一般財団法人 日本ガス機器検査協会によるものである。

通常、日本で流通している「都市ガス」は、海外から輸入された液化天然ガスを気化し、LPGを添加して熱量調整を行ってから供給される。しかしながら、熱量の調整にはそのための設備が必要であり、設備を有しない事業者は外部へと調整委託するなどしなければならないためコストがかさむ。こうした点は、ガスの小売り自由化の参入障壁の一つと捉えられている。

欧州や韓国などの諸外国においては、一定範囲内の熱量で都市ガスを供給することができる「熱量バンド制」が導入され、同制度が現に運用されている。熱量バンド制に移行することにより、熱量調整設備を持たない事業者でもガス小売事業に新規参入しやすくなることから、我が国においても熱量バンド制移行に向けた検討が行われている。

当報告書は、仮にわが国でも熱量バンド制へと移行した場合、各家庭や事業者らが使用するガス機器に実際にどのような影響が出るかを調査し、まとめたものである。現調査時点においては、熱量とCO%との間に相関が見られないことや、ある程度の期間使用されてきている経年機器についても併せて調査しなければならないなど課題はあるものの、現在販売されている家庭用燃料電池やガスコンロを選定、確認試験を行った結果だけを見れば、省令・JIS 等で定められている安全面の基準値を超えないことが確認されたとの内容である。

一方で、ガス機器のメーカーサイドは、熱量バンド制への移行について難色を示していることが読み取れる。熱量バンド制においては、例えば一般家庭に供給される都市ガスの熱量が一定ではなくなるため、ガス機器本体内での熱量調整、もしくは、周辺機器として追加可能な機器類を搭載・設置できるようにしなければならない。

現状技術は、供給される都市ガスの熱量が一定であることを前提にしていることから、「技術的に対応が不可能」とのことだ。しかしながら、「都市ガス消費者は、一体いつまで熱量調整にかかる余分な費用を負担し続けなければならないのか」といった学識者の意見も現に存在する。今後の制度移行の可能性を見越して、より早く熱量バンド制対応機器を開発し、製品を市場投入できたメーカーが市場占有率を高められるとも考えられ、また、対応が遅れれば海外メーカーの市場占有を進めかねないことなどもあり、結局のところ、ガス機器メーカーの熱量バンド制対応は粛々と進むのではないかと推察する。

調査報告の内容については、下記の資料を参照のこと。

【 参照元 】経済産業省 | 熱量バンド制への移行による燃焼機器の影響等調査 報告書(PDF)