2019年3月27日付にて、U.S. Energy Information Administration(EIA:米国エネルギー情報局)のウェブサイトに、International Maritime Organization(IMO:国際海事機関)による船舶燃料油の硫黄分規制の導入が関係業界にどのように影響するか、市場動向等を分析・解説するレポートが掲載された。

2016年10月24日~28日、英・ロンドンで開催されたIMOの第70回海洋環境保護委員会において、(1)船舶燃料油の硫黄分濃度規制の強化を2020年から開始すること、(2)燃料消費実績報告制度を導入すること、との決定がなされた。

これにより、2020年からは、全ての船舶が、一般海域(北海やバルト海などの「指定海域」を除く)における燃料油中硫黄分の規制値(現行3.5%以下)を0.5%以下とするよう求められることになり、この規制に適合する燃料油、同等の効果のあるLNG等の代替燃料油、もしくは排気ガス洗浄装置を使用しなければならない。また、国際航海に従事する総トン数5000トン以上の船舶については、2019年からIMOにその運行データ(燃料消費量、航海距離及び航海時間)を報告しなければならなくなる。(国土交通省の平成28年10月31日付リリースを参照のこと)

これまでの燃料精製産業において、船舶燃料油は「大きな硫黄分の吐き出し先」であったが、2020年からの規制導入開始を受け、各燃料油の市場シェアの入れ替わりが見られるようになる。

EIAの資料によると、アメリカの船舶燃料油に占める高濃度の硫黄分を含む残渣油(High-Sulfur Residual Fuel Oil)の市場シェアは、2019年の58%から2020年には3%にまで減り、その後、排ガス洗浄装置の導入等が進むことで、2022年には24%まで戻すものの、2025年に22%まで減少すると見込まれている。

一方、低濃度硫黄分含有残渣油(Low-Sulfur Residual Fuel Oil)のシェアは、2020年の38%から、2025年には43%に、硫黄分が低い留出燃料油(Distillate Fuel Oil)は、2019年に36%、2020年には57%に達するものの、2025年には29%まで減少するとの見込みだ。また、LNGの利用については、初期投資などがかさむためなかなか導入が進まないものの、2030年には7%、2050年には10%程度になると見られている。

将来、IMOの規制は緩和されるのか、逆にさらに強化されていくのか、どのように変わっていくのかは不明瞭だ。船舶運用者と燃料精製事業者にとっての「不確実性」についても、同レポートで触れている。詳細については、EIAのレポートを参照のこと。

【 参照元 】EIA | The Effects of Changes to Marine Fuel Sulfur Limits in 2020 on Energy Markets