国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が管理法人を務める内閣府プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/次世代パワーエレクトロニクス」で、世界で初めて、ガスからクラックのない1立方センチ級の体積を持った単結晶ダイヤモンドの作製に成功した旨、2019年3月20日付で発表した。

 合成面積のスケールアップが容易なガスを原料とする手法により世界最大級の高品質結晶を作製できたことから、この成果は、大型ウエハー実現につながる大きな一歩となる。今後、ダイヤモンドを用いた次世代パワー半導体の開発が加速し、さまざまな電気機器に組み込まれることにより、より高効率な電力利用が可能になり、飛躍的な省エネルギー社会実現につながることが期待できる。

 今回用いられたマイクロ波プラズマCVD法は、ダイヤモンド結晶作製方法の一つで、原料ガスをプラズマにより分解し、生成される活性な原子・分子を基板表面上で反応させて結晶を成長させる方法である。プラズマを生成する励起源としてマイクロ波を用いている。本技術ではマイクロ波を微小間隔で連続的に発生させること(パルス化)により、原料ガス温度の上昇を抑制している。

 ダイヤモンドをCVD法で合成する場合、炭素源(一般的にはメタンが使われる)を大量の水素と混合したもの(比率としては、メタン1%+二酸化炭素1%+水素98%、など)を原料ガスとして使うようである。いずれも天然ガスから得られるものだ。

 近年、例えば露・ガスプロムは、水素が主だったエネルギー源として使われる社会が来ることを想定し、また、生産時に二酸化炭素を排出しない方法を模索するため、メタンを熱分解することで水素を得る研究に熱を入れている。(Bloomberg 2018年11月8日の記事より

 「天然ガス」という資源から、省エネや環境負荷の低減という筋で、未だ多くの肯定的な可能性があることに面白みを感じるところである。

【 参照元 】 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 | 世界初、ガスからクラックのない1立方センチ級単結晶ダイヤモンドの作製に成功