2019年11月5日付のNHK NEWS WEB上にて、ヘリウムの安定供給を求めて、関係する学会が緊急声明を発表した旨、掲載された。

ヘリウム(He)は、水素に次いで軽く、他の原子とほとんど反応しない(不活性、燃えない)性質を持ち、且つ、沸点が最も低い(約-269℃で液化)という特徴をもっている。半導体の製造やMRIなどの医療機器でも使用される重要な物質であるが、日本はその100%を海外からの輸入に頼っている。大気中には0.0005%しか存在せず、天然ガスとともに、ごく微量が産出されている希少な物質である。

2012年末、世界のヘリウムの需給がひっ迫したことで、日本国内からヘリウムの在庫が消える「ヘリウム・ショック」が起こった。2014年には均衡を取り戻したものの、2015年時点で、「2013年以降年率平均2.6%で需要が増加し、2016年以降には再び需給がひっ迫する可能性がある」との見込みもあった。世界的に使用量が増加傾向にあるなか、例えば、日本国内においては、東京大学の物性研究所等が、気化したヘリウムを回収して再液化する事業を始めるなど、ヘリウムの使用量を抑える、もしくは、代替の素材・方法を見つけるなどの研究が進められている。

一方で、ヘリウムの生産サイドにも動きがある。露・ガスプロム(Gazprom)は、『シベリアの力(Power of Siberia)』ガスパイプラインの中継拠点として、アムール・ガス加工プラント(Amur Gas Processing Plant)を設置しているが、年420億立方メートルの天然ガスを加工する同プラント内において、天然ガスからヘリウムやエタンなどの副産物を分離、ヘリウム等の生産量を増やすことで世界的な需要の増加に対応する。現在、Gazpromのヘリウムの生産能力は年500万立方メートルであるが、アムール・ガス加工プラントの稼働により、2026年までに、同生産能力を6000万立方メートルへと増加させる方針。同プラントで生産したヘリウムは、主には日本や中国などのアジア地域に輸出する計画を立てている。

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